研究分野における非破壊検査の手法

非破壊検査とは検査の対象物を破壊したり強いダメージを与える事無く、対象物の劣化状態や含まれている物質などの情報を引き出す検査方法の事です。この非破壊検査は製造現場などにおいて製品や材料の検査に有用な検査方法ですが、新規物質の開発や原因の究明など、研究所における検査手法としても大きな役割を果たしています。破壊試験の代表的なものは引張試験や曲げ試験など、いずれも検査対象物に力を加えるなどして発生する傷や欠陥箇所を調べたり計測したりする方法で、研究段階においても用いられています。一方研究所では検査して終了ではなく、検査した物自体を更に実験に用いるケースや、同じ対象物を異なる検査にかけたいケースも少なくありませんので非破壊検査は重要です。

研究所で用いられる頻度の高い検査方法は分光法と呼ばれる方法です。この方法は対象物に光や電磁波等を照射する事により対象物から反射したり、対象物を透過した光や電磁波を分析する事で検査対象物に起因する様々な情報を得る事を可能にします。実際に照射されるものとしては、可視光線やX線などの様々な電磁波や超音波など多くのものがあります。また、例えばX線を用いる方法の中でも目的によって様々な方法を使い分けています。

蛍光X線という手法は、検査対象物にX線を照射する事により、その物質を構成する元素から放出される特性X線のエネルギーを計測する事でその元素の存在を検出する方法です。その他に同じX線を照射する方法でも分子の詳細な構造を調べるX線回折や表面の状態を観測するXPSなど、エネルギーや検出方法が異なる様々な手法があります。このように研究所においては実に多様な非破壊検査が行われています。